ハンドブック

序文

アルコホーリクス・アノニマスは、経験と力と希望を分かち 合って共通する問題を解決し、ほかの人たちもアルコホリズム から回復するように手助けしたいという共同体である。

・AAのメンバーになるために必要なことはただ一つ、飲酒を やめたいという願いだけである。会費もないし、料金を払う必 要もない。私たちは自分たちの献金だけで自立している。

・AAはどのような宗教、宗派、政党、組織、団体にも縛られ ていない。また、どのような論争や運動にも参加せず、支持も 反対もしない。

・私たちの本来の目的は、飲まないで生きていくことであり、 ほかのアルコホーリクも飲まない生き方を達成するように手助 けすることである。

(AAグレープバイン社の許可のもと再録)


第三章 さらにアルコホリズムについて

私たちのほとんどは、自分が本物のアルコホーリックだとは認めたがらなかった。自分の肉体や精神が、まわりにいる人たちとは違うなどということを、喜んで認める人間がいるわけはない。だから私たちが、ふつうの人のように飲めるかもしれないと、役にもたたない実験をしてきたからといって、驚くことはない。何とかなるだろうという考え、いつかは飲むのを楽しむことができるようになるという大きな妄想が、病気の酒飲みに取りついている。このおそろしい妄想を、たくさんの病的酒飲みは死の門口に立つまで、そうでなければ狂ってしまうまで、手放せないでいる。

私たちは自分がアルコホーリクであることを心の底から認めなくてはならないことを知った。これが回復の第一ステップである。自分はふつうの酒飲みと同じだという、あるいは今にそうなれるかもしれないという妄想を、まず徹底的に打ち砕かなくてはならないのだ。

私たちアルコホーリクは、飲酒をコントロールする力をなくした。本物のアルコホーリクは、決して飲酒に対するコントロールを取り戻すことはない。私たちも、自分はコントロールを取り戻したと思ったことがあった。けれど、そのちょっとした、あまり長くない中休みのあとには、必ずもっとひどい状態がやってきて、切ない、なぜだかわからない落ちこみに苦しまなければならなかった。私たちのようなアルコホーリクは、進行性の病気にかかっているのだということを、私たち全員が一人残らず信じている。少し長い目で見れば、私たちは悪くなることはあっても、決して良くなることはなかったのである。

私たちは足をなくした人間にたとえることができる。なくした足が生えてこないのと同じように、私たちのようなアルコホーリクをふつうに飲めるようにする方法はない。私たちは思いつく限りの治療法はみんな試してみた。少しはよくなったように思ったこともあったが、そのあとは必ずもっとひどくなった。アルコホリズムをよく知る医師たちの一致した意見では、アルコホーリクがふつうに飲めるようになることはないという。科学はいつかそれをやり遂げるかもしれないが、まだ実現していない。

私たちが何を言っても、大勢の人たちが、自分は本物のアルコホーリクだとは信じない。そうして思いつくかぎりの方法で自分をだまし、実験をやって、自分がアルコホーリクでないことを証明しようとする。飲むことにコントロールをなくしている人が、回れ右をして紳士のように飲むようになったら、私たちは彼に脱帽しよう。確かに私たちも、他の人と同じように飲もうとして、つらすぎるくらいつらい努力をたっぷりと、長い間繰り返した。

私たちがやったことをいくつか書いてみよう。ビールだけに限る、飲む杯数を決める、一人では決して飲まない、昼間は飲まない、家でだけ飲む、家に酒を置かない、仕事の時間中は飲まない、パーティでだけ飲む、スコッチからブランディに切り替える、ナチュラルワインしか飲まない、仕事中に酒に手を出したらクビになることを承知する、旅行をしてみる、旅行は控える、(宣誓の儀式をするかしないかは別にして)永遠に飲まないと誓う、運動の量を増やす、心に感動を呼ぶような本を読む、健康施設や療養所に行く、精神病院に入ることを受け入れる──等々、例をあげればきりがない。

私たちはあなたがアルコホーリクだと宣告したいわけではない。だがあなたは自分で簡単に診断が下せる。これから近くのバーに行って、節酒を試して見る。何杯か飲んだら、きっぱり止める。いっぺんではなく何度かくり返してみる。もしあなたが自分に正直なら、結論が出るまでにそう長くはかからないはずである。自分の状態をはっきりとつかむ役に立つのだから、あなたが経験する不安やイライラには値打ちがあると言える。証明のしようはないが、飲み始めの早いうちだったら、私たちのほとんどは酒を止められたろうと思う。だが困ったことに、時間があるうちに心底止めたいと思うアルコホーリクはほとんどいない。

アルコホーリクス・アノニマス 第三章 77~80頁より


第五章 どうやればうまくいくのか?

 私たちが選んだ道を同じように徹底してたどって、それでも回復できなかった人を、ほとんど知らない。確かに、この簡単なプログラムに自分をゆだねられない、あるいはゆだねたくない、自分に正直になることがどうしても不可能な体質の人はまれにいる。そういう不幸はその人の責任ではないので、生まれつきとでも言おうか。きびしい正直さが必要な生きかたをとらえ、その生きかたを伸ばし育てていくことができない、回復する率が平均までいかない人たちである。また情緒に障害があったり、精神が病んでいる人もいるが、自分に正直になる能力さえあれば、彼らもほとんど回復する。

 私たちは、自分たちがいつもどんなふうだったか、そして何が起こって、いまどうなっているのか、おおよそのところをはっきりさせる。あなたが、私たちの持っているものを欲しいと思い、それを手に入れるためなら何でもするという気持ちになったのなら、あなたはもうステップを着実に踏む準備ができたのだ。

 私たちは、これらのステップの途中で立ち止まっては、もっとやさしい楽なやり方が見つかるかもしれないと考えた。だが見つからなかった。最初から思い切って、徹底してやるように、私たちは心からお願いしたい。私たちのなかには自分の古い考えにしがみつこうとしている仲間もいたが、完全にその考えを捨てないうちは結果は何も生まれなかった。

 私たちが相手にしているのはアルコール──巧妙で、不可解で、強力なもの──であることを、忘れないで欲しい。それは、助けなしには手に余るものなのだ。だがここに一つどんな力でも持っているものがある。それは神である。あなたが今、神を見つけ出しますように!

中途半端ではどこにも行き着けなかった。私たちは転機に立たされていた。私たちは思いきって神に保護と配慮を願った。

 つぎに、私たちが踏んだステップを示す。回復のプログラムとして示されているものである。

  1. 私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
  2. 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
  3. 私たちの意志と生きかたを、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
  4. 恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行ない、それを表に作った。
  5. 神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
  6. こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。
  7. 私たちの短所を取り除いて下さいと、謙虚に神に求めた。
  8. 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
  9. その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
  10. 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。
  11. 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
  12. これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。

 「何ていう要求なんだ! とてもじゃないがやり通せるものではない!」と、私たちの多くが叫んだ。でもがっかりしないで欲しい。私たちの誰一人として、これらの原理を完全に実行できたという人はいないのだ。私たちは聖人ではない。大切なのは、私たちが霊的な路線に沿って成長したいと願っていることである。ここに掲げた原理は成長への道標べだ。私たちは霊的な完成をではなく、霊的な成長を求めているのである。

私たちの、アルコホーリクの説明、不可知論者についての章、回復前後の一人ひとりの経験から、次の三つの考えが明らかになる。

 (a)私たちはアルコホーリクであり、自分の人生が手に負えなくなったこと。

 (b)おそらくどのような人間の力も、私たちのアルコホーリズムを解決できないこと。  

 (c)神にはそれができ、求めるならばそうしてもらえること。

アルコホーリクス・アノニマス 第五章 116~119頁より


平安の祈り

神様、私にお与えください

自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを

変えられるものは、変えていく勇気を

​そして、二つのものを見分ける賢さを


第六章 「行動に移す」より

この行程を労を惜しまず念入りにやっていると、半分も終わらないうちに、あなたはびっくりすることになる。新しい自由、新しい幸福を知るようになっているのだ。過去を悔やむこともなければ、それにふたをしようともおもわない。心の落ち着きという言葉がわかるようになり、やがて平和を知る。私たちがどんなに落ちぶれていたにしても、自分の経験がどれほどひとの役に立つかがわかるようになる。自分は役立たずだという自己れんびんの感情が消え失せる。利己的なことに関心がなくなり、仲間のことのほうに関心がいくようになる。身勝手さは消えてしまう。私たちの人生に対する態度と展望がまるっきり変わる。人間に対する恐怖症や経済的不安もなくなる。かつては私たちを困らせた状況にも、直感的にどう対応したらいいのかがわかるようになる。自分ではできなかったことを、神がやってくださっていることを、私たちは突如として気づくようになるのだ。

これはとんでもない約束だろうか。そうは思わない。こういうことは私たちの間で実際に、ときには急速に、ときにはゆっくりと実現している。取り組みさえすれば必ず実現する。

アルコホーリクス・アノニマス 第六章 152~153頁より


AAの12のステップ

  1. 私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
  2. 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
  3. 私たちの意志と生きかたを、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
  4. 恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行い、それを表に作った。
  5. 神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
  6. こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。
  7. 私たちの短所を取り除いてくださいと、謙虚に神に求めた。
  8. 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
  9. その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
  10. 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。
  11. 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
  12. これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。

(AAワールドサービス社の許可のもとに再録)


AAの12の伝統

  1. 優先されなければならないのは、全体の福利である。個人の回復はAAの一体性にかかっている。
  2. 私たちのグループの目的のための最高の権威はただ一つ、グループの良心のなかに自分を現される、愛の神である。私たちのリーダーは奉仕を任されたしもべであって、支配はしない。
  3. AAのメンバーになるために必要なことはただ一つ、飲酒をやめたいという願いだけである。
  4. 各グループの主体性は、他のグループまたはAA全体に影響を及ぼす事柄を除いて、尊重されるべきである。
  5. 各グループの本来の目的はただ一つ、いま苦しんでいるアルコホーリクにメッセージを運ぶことである。
  6. AAグループはどのような関連施設や外部の事業にも、その活動を支持したり、資金を提供したり、AAの名前を貸したりすべきではない。金銭や財産、名声によって、私たちがAAの本来の目的から外れてしまわないようにするためである。
  7. すべてのAAグループは、外部からの寄付を辞退して、完全に自立すべきである。
  8. アルコホーリクス・アノニマスは、あくまでも職業化されずアマチュアでなければならない。ただ、サービスセンターのようなところでは、専従の職員を雇うことができる。
  9. AAそのものは決して組織化されるべきではない。だがグループやメンバーに対して直接責任を担うサービス機関や委員会を設けることはできる。
  10. アルコホーリクス・アノニマスは、外部の問題に意見を持たない。したがって、AAの名前は決して公の論争では引き合いに出されない。
  11. 私たちの広報活動は、宣伝よりもひきつける魅力に基づくものであり、活字、電波、映像の分野では、私たちはつねに個人名を伏せる必要がある。
  12. 無名であることは、私たちの伝統全体の霊的な基礎である。それは各個人よりも原理を優先すべきことを、つねに私たちに思い起こさせるものである。

(AAワールドサービス社の許可のもとに再録)

AAの12の概念(短いかたち)

  1. AAのワールド・サービスのための最終的責任と究極の権威は、常にわれわれの共同体全体の集合的良心に帰属すべきである。
  2. AAの評議会は、ほぼ実際上、その世界的なことがらにおいて共同体全体の積極的な声であり事実上の良心となっている。
  3. 効果的なリーダーシップを確保するため、AAの各構成要素、つまり、評議会、常任理事会とそのサービス法人、スタッフ、委員会、法人の管理責任者には、伝統的な「決定権」が与えられるべきである。
  4. すべての責任あるレベルにおいては、それぞれが果たすべき責任に見合った割合で投票権のある代表権が認められ、伝統的な「参加権」が保証されるべきである。
  5. われわれの機構全体を通じて、少数意見が聴かれ、個人的苦情が慎重に考慮されるよう、伝統的な「アピール権」が行き渡っていなければならない。
  6. ワールド・サービスの事柄のほとんどにおける主な主導権や実際の責任は、常任理事会として活動する評議会の常任理事メンバーによって遂行されるべきことを、評議会は認識している。
  7. 常任理事会の憲章および準則は法的文書であり、それによって常任理事はワールド・サービスに関することを管理し、執行する権利を与えられている。評議会憲章は法的文書ではない。その最終的効力は伝統とAAメンバーの資力にかかっている。
  8. 常任理事は全体的方針と財政についての主要な企画立案者であり、管理者である。彼らはそれぞれ分離して法人化され、絶え問なく活動を続けるサービス機関の後見的監督であり、これらの法人のすべての理事を選ぶ権限を通してこれを実行している。
  9. 良いサービス・リーダーは、われわれの将来の機能と安全のために、すべてのレベルで欠くべからざるものである。かつてAAの創始者たちによって実践された最初のワールド・サービスのリーダーシップは、アルコホーリクス・アノニマスの常任理事によって、必ず引き継がれなければならない。
  10. すべてのサービスの責任には、それに見合った同等の権限が伴わなければならない。その権限の範囲は、常によく定義されていなければならない。
  11. 常任理事には、できるだけ優れた委員会、サービス法人の理事、管理責任者、スタッフ、コンサルタントが、常に必要である。構成、資格、導入方法、そして権利と義務の問題には、常に重大な関心を払う必要がある。
  12. 評議会は、危険な富と権力の座に決してなることはなく、財政原則は十分な運営基金と準備金とをもった慎重なものとし、評議会のだれひとりとして、他のメンバーに対して絶対的な権威の地位に着くことはなく、その重要な決定はすべて、討論と投票とによって、できる限り事実上の満場一致に至るようにし、その決議はいずれも個人を罰するものであったり、公の論争を引き起こすものではなく、政府の役をするどのような行為もなく、評議会が奉仕するこの共同体と同様に、その思想と行動において、常に民主的であり続ける、ということに留意してAAの伝統の精神を必ず順守すべきものである。

(AAワールドサービス社の許可のもとに再録)